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懐柔科学都市全体都市計画方案―三城一区計画

懐柔科学都市のコンセプト図

2018.9.25

JCAP7北京市懐柔科学都市コンペで優勝

1. JCAP7中国国家プロジェクトの国際コンペに参加

(1) 河北雄安新区都市設計国際プロポーザル・コンペでトップ12チームに入選

雄安新区は、深圳経済特区、上海浦東新区に続く第三の中国国家プロジェクトと位置付けられる都市開発計画です。これは、北京市の非首都機能を北京の南100kmにある開発地区に移転させるため、国家が用意した200km2の雄安新区に新都市を計画・開発しようという大プロジェクトです。中国内外から279社の計画・設計事務所により組成された計183チームが応募し、JCAP7 は書類選考の結果12チームの一つに選ばれ、プロポーザル形式のコンペが実施され、2017年9月20日に提案書を提出しました。残念ながら、トップ3チームに与えられる優勝には及びませんでしたが、その提案内容は審査委員会から高い評価を受けました。また、世界的なコンペで183チームの中から12チームに選ばれたということで、JCAP7の中国における評価を大幅に向上させることができ、今後の中国におけるJCAP7の官民の顧客に対する営業活動に大きな弾みを付けることができました。

雄安新区位置図

(2) 北京懐柔科学都市計画国際プロポーザル・コンペで優勝

懐柔科学都市は、北京の全体都市計画において、首都科学技術革新戦略を実行していく三城一区計画の一つで、中国の科学技術の発展のための基幹的な活動中心として発展することが期待されています。
2017年9月に、北京市政府は世界各国の著名な都市計画・設計事務所を対象に「北京懐柔科学都市計画プロポーザル・コンペ」への参加チームを募集しました。書類選考の結果、参加した34チームの中から8チームが選定され、プロポーザル方式のコンペが実施されました。JCAP7からは、JPM、都市環境研究所、高野ランドスケーププランニングの三社が参加し、このJCAP7と中国深圳市都市計画設計研究院とがJVを組んで(以下深圳/JCAP7-JVと言う)このコンペに参画し、見事優勝を勝ち取りました。

2. 北京懐柔科学都市―進化し続ける百年科学都市の建設

2016年北京市人民政府は、「懐柔科学都市建設発展計画(2016-2020)を発表しました。その中で、懐柔科学都市に、独自に世界的な技術的革新を起こすことができる施設と開放的な科学研究プラットフォームを建設して、中国における科学技術の革新の中心、そしてシンボルとする戦略を立てました。

懐柔科学都市全体都市計画方案―三城一区計画

更に、2017年の「北京都市全体計画(2016-2035)」では、「三城一区」の計画を掲げ、懐柔科学都市、中関村科学都市、未来科学都市と北京経済技術開発区の4つの地域がメインプラットフォームとなって中国の科学技術革新を推し進める方針が打ち出されました。 そして、上に述べたように2017年9月、北京市政府は、懐柔科学都市計画に対して世界の著名な都市計画・設計事務所によるプロポーザル方式のコンペを実施し、JCAP7は深圳市都市計画設計研究院と協同で、このコンペに参画しました。その結果、深圳/JCAP7-JVと北京市建築設計研究院とCallisonRTK、他のJVの2チームが、他の中国とアメリカ、ドイツ、フランスの設計事務所のJVチームを退けて、見事優勝を果たしました。

3. プロポーザルの紹介

プロポーザルの図面や具体的な計画は、主催者側より公表することを禁じられています。従ってここでは深圳/JCAP7-JV提案のコンセプトを述べるにとどめます。

(1) 三つの挑戦
JCAP7の一員である都市環境研究所は筑波学園都市計画を実施した経歴を持ち、この経験から、懐柔科学都市は次の三つの挑戦に応えねばならないとしました。
  • ・グローバルな要求に答えられる持続可能な技術革新力どう育成していくか?
  • ・予測できない今後百年の変化し続ける技術研究の要請に科学都市はどう対応していくか?
  • ・未来の人類発展のフロンティア―として、文明の進歩をどう能動的に取り入れていくか?
(2) 三つの進化
この新たな挑戦に対して、懐柔科学都市は、根本的に方法論から改革していく必要があります。即ち、進化のシステムには強い自己組織と柔軟な適応能力が必要で、拡大するネットワークを活用して、それらを相互に作用させることにより進化は飛躍的に進行すると考えています。
  • 技術革新の進化: 基礎科学の使命は、人類にとって未知の領域を解明することにあります。従来の閉鎖的で硬直した研究手段は、もはや適用できないものとなります。グローバルな科学研究ネットワークへの自由なアクセスや、科学都市の大型研究科学装置群を集約できる強みを利用して、様々な科学領域が交差できる開放的な研究プラットフォームを作ることが重要です。ここに、世界から科学技術の革新を可能にする人材・データ資源を呼び寄せ、相互に情報交換することによって、持続する科学的創造力を構築します。
  • 都市の進化: 予測不能な今後百年の技術革新に対応できる都市であり続けるためには、都市がその変化に合わせて成長し、自らも進化できる機能を備えねばなりません。公共の都市構造や都市を構成する基本ユニットは、都市計画と市場メカニズムの両者が有機的に融合され、進化を遂げるようにすべきです。人間に優しい都市づくりの理念を近隣ブロック、ユニット、コミュニティー、市街地域等の各階層に浸透させ、異質な要素をも取り込んで進化する都市を形成することです。
  • 文明の進化: 農業文明は自然を探求し、工業文明は自然を強奪する歴史でした。今後の情報化、スマート化、エコロジー化と言う流れの中で、科学都市は万物の繋がり・共存共栄の理念を求めていく必要があります。安全で親しみやすい豊かな生態環境を育み、百年都市を作り上げていくための目標・戦略を作り上げていかなければなりません。 特に、「リボリューション・ネットワーク」と「インスピレーションの都市」の概念は重要です。リボリューション・ネットワークとは、今後の科学技術を革新的に進化させてゆくための体系で、科学技術を開放させていくことの必要性と、不確実性を受け入れながらその革新的な要素を取り入れ、両者の相互の働きかけによって、一段上の革新を引き起こすことにあります。「インスピレーションの都市」とは、科学研究者を中心に置く優しい都市でありながら、研究開発意欲を促し、都市が科学技術の発展と共に成長していくポテンシャルを持つことにあります。

4. 提携と補完

深圳市都市計画設計研究院とJCAP7は、それぞれが持つ特徴と強みを集約させ、協力しあい、よりマクロ的な視点と先見性のある都市運営思想を展開させることによって懐柔科学都市の百年ビジョンを提案することができました。
深圳市都市計画設計研究院は、都市計画とコンサルティング業務に特化した研究設計機関で、1990年の設立以来、深圳経済特区の都市発展の経緯を見つめてきました。また、引き起こされる様々な都市問題を研究し解決しながら、深圳市都市全体計画の実施に深く関わってきた実績を持ちます。
両者は、深圳市の経験や筑波学園都市の発展の経過などをもとに、相互にそれらの都市を訪問し、数回にわたる徹底的に議論を通して、懐柔科学都市の未来のあり方を研究してきました。本プロジェクトを通じて、より深いかかわりを持つ提携体制を構築することができたことは望外の喜びであり、今後とも同じような開発プロジェクトに参画することを固く誓いました。

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